Enforced Evolution 外伝〜メイマイ編〜
第3話
「どれ、ではお前の妹の味を堪能させていただきましょうかね……」
ラトに促されゆっくりと立ち上がったルドーラはそのまま腰巻を外し、自らの裸体をあらわにして近づいてきた。
すでにその腰の逸物ははちきれんばかりに勃起し、天を差そうかという勢いで起立している。
「ひっ!」
性の知識にはあまり疎いリムでも、それが何を意味していることぐらいは理解できる。
あの巨大なものは自分の中に埋まりたくて雄々しく起っており、今すぐにでもここから逃げないとアレに自分の純潔を奪われてしまう。ということぐらいは。
「や、やだっ……助けて、助けてお姉ちゃん!!」
ムダだろうと頭では分かってはいるが、リムは自分を押さえつけているラトに助けを求めた。
ルドーラのしもべとなっているラトは当然そんなことには耳を貸さない……
と、思いきやラトはリムにとっても予想外な言葉を吐き出してきた。
「ええ、助けてあげるわ」
それを聞いて一瞬リムは微かな希望を抱いてしまったが、すぐにそれが間違いだということがわかった。
「ルドーラ様があなたに入れやすいように助けてあげるわよ。ククク!」
悪意が篭った笑みを浮かべたラトはリムの秘部に右手を伸ばすと、ぐずぐずに濡れた陰唇を指でぐぱぁと開いてルドーラを受け入れる準備を整えた。
「こうすればルドーラ様も入れる穴を間違えないわよ。よかったわねぇリム!」
「い、いやああぁぁっ!!こんなの、こんなの絶対にいやぁ!!ああああぁぁぁあぁっ!!」
助けてくれるどころか死にたくなるほど恥ずかしい格好をさせられ、あまりに絶望的な状況に半狂乱になったリムの視界に突如すっと暗い影が落ちた。
ビクッと震えたリムが脅えた目を向けると、リムの上にルドーラが逸物を握り締めたまま覆い被さって来るのが見えた。
「ひいぃっ!!こ、来ないでぇ!!」
「…まだ幼い体ですから私のモノは少し辛いかもしれませんが……ま、私はきつい感触も好きなので問題はありません」
ルドーラとしては別にリムの体を労る必要も意味もないので、すでに濡れそぼっているリムの秘部に自らのペニスを宛がうと、そのままぐいぐいと腰を突き入れ始めた。
さすがにまだ成長途上のリムのそこは非常に狭く、濡れているとはいえメリメリと強引にこじ開けて進むしかないので
リムはルドーラのペニスが自分の体を引き裂かくような凄まじい痛みをじっくりと味合わされていた。
「い!いだぁぁぁぁい!!やめ、やめぇ!抜いてぇぇ!!」
だが当然のことながらルドーラが抜くはずもなく、とうとう『ブチリ!』というなにかが引きちぎれる音が頭に響き
ルドーラはその怒張をズブリ!とリムの中へとはめ込んでしまった。
「あ…あぁ……」
自分の純潔がこんな強引に、かつこんな外道に奪われたことへのショックと体をバラバラに引き裂かれるような痛みに
リムは悲鳴を上げることすら忘れてカタカタと体を震わせていた。
やはり未発達なリムの体ではルドーラの全てを受け入れることは出来ず、ルドーラのペニスは根元が収まりきらないで顔を出し
リムの腹はちょうど棒状にぷっくりと膨らんで見える。
「あ〜ぁ、やっぱりリムの体ではルドーラ様のを完全にはめることは出来なかったか…
まあ、挿れてさえしまえば関係ないけれどね」
ルドーラによって純潔を奪われたラトには、リムが味わっている痛みも絶望も充分に理解できている。それはかつて自分も通った道だからだ。
そしてもちろんその次に来ることも知っている。
ルドーラの手によってもたらされる、人間を辞めてしまうほどの強烈な快楽を。
「ほう……、これはラトの言ったとおり、内に篭る魔力はなかなかのものですな。私の逸物を通してビンビン伝わってきますよ。
これは、単純な魔力の量では下手をするとラトより高いかもしれませんな」
リムのその貧弱な体ゆえにあまり期待していなかった分、内なる魔力の望外の大きさにルドーラは歓喜の笑みを浮かべた。
これならば、自分が魂を重ね合わせる価値があるというものだ。
「いだぁ……いたいのぉ……ジンジンするのぉ……。おねえちゃん、たすけてぇ……」
「大丈夫、痛いのは今だけよ。もうすぐ、痛みなんか全然感じなくなるんだから」
焼けた棒を突っ込まれたような熱さと痛みで意識も朦朧になっているリムはうわ言のようにラトに助けを求めているが
そんなリムにラトは体が動かないように後ろから抱きしめながら優しく、しかしどこか他人事のように囁いた。
「フフフ…、その助けを請いてむせび泣く姿…。血が繋がっていないと聞いていますが姉であるラトにそっくりですよ。
そうなると、悦楽に狂う姿もまたそっくりなのでしょうかねぇ……!」
そろそろ挿れているだけでは収まらなくなったのか、ルドーラはゆさゆさと腰を揺すってリムの中へ抽送を始めた。
ルドーラの腰が前後に動くたびに、リムとの接合部から白い蜜と赤い血がぱちゅっ、ぱちゅっと音を立てて飛び散っていく。
そして、動くたびにぎちぎちの膣内でリムの内襞とルドーラの肉棒が擦れ、擦過による痛みというより熱がリムの神経を容赦なく焼き焦がしていった。
「い、だ………いだ・ぁ……」
あまりの痛さにまともに言葉を紡ぐこともできず、ラトはルドーラの蹂躙にただ身を任せ続け、逆にルドーラはリムの体を味わうことに夢中になっていた。
「おおぅっ!この千切られそうなきつさがまた、新鮮でいいですねぇ!!その泣き顔もそそりますよ!!
どうですかぁ?初めて男を受け入れた気分は?えもいわれぬ心地よさでしょう………ん?」
「………」
しかし、ルドーラの呼びかけにリムは全然反応しない。どうやらもう泣き叫ぶ気力すら失われ、人形のように無反応なままかくんと頭を垂れている。
元々自分の快楽を得ることしか考えていなかったルドーラだが、こうも相手が無反応ではさすがにやる気を失ってしまう。
「…おやおや。すこし加減を違えましたかな?まったく、人間は心身共に脆くて本当に面倒くさいですねぇ……
では、完全に壊れてしまう前に始めましょうかね」
本当はもう少し愉しみたかったのだが、しもべにする前に魂が壊れてしまったら強制進化の価値も半減してしまう。
壊れた魂と自分の魂を重ね合わせても、あの胸がすくような爽快感は決して得られない。
あくまでも、抱いている相手の力と魂を隅々まで味わい自分のものとしなければ意味はないのだ。
「さあ心してください。これから味わう快楽は、今までの貴方の生涯で決して感じたことのない素晴らしいものですから!」
リムを睨むルドーラの7つの眼がギン!と赤く光った瞬間、ぐったりとしていたリムの体がビクン!と飛び跳ねるように起きた。
何も写していなかった瞳にかすかな光が差したかと思うと見る見るうちに狂気を孕んだ強い輝きとなっていき、青ざめていた顔はあっという間に真っ赤に発情していく。
「うぁ………?!あ!あっあっあぁ!!!」
ルドーラに貫かれた秘所からは破瓜の血を洗い流すかのようにこぷこぷと蜜が溢れ出し、力なくぐったりしていた両腕はより身近にルドーラを感じようと
ルドーラの胸を抱きすくめ、その膨らみかけている双乳をルドーラの胸にぎゅうぎゅうと押し付けていた。
「あぁ〜〜っ!!やだこれ、気持ちいい!ちんちん挿されてるの私なのに、私がちんちん挿してるみたいぃ!!
ズポズポ、ズポズポって、狭くてあったかい肉とちんちんが擦れてゴリッとしてぇ…!
うわぁぁ〜〜っ!気持ちいいのぉぉ〜〜〜〜〜!!もっと、もっとしたい、してぇぇ〜〜〜〜〜!!」
強制進化の作用で、自分を犯しているルドーラの感覚も共有し始めたリムの心はたちまちに快楽に蕩け、それまでルドーラに持っていた嫌悪感は消え去って
よりルドーラを感じようと積極的に腰を動かしながらその唇を吸っていった。
「ふははは!いいですよ!魂の純度がどんどん増してきています!
さあ、貴方の全てを私に委ねなさい!その身に篭る魔力、魂、全てを私に捧げるのですよ!!」
「はぁい!ルドーラさまぁぁ!私の、私の全てをルドーラ様に捧げます!この身も心も、全てを差し上げます!
ですから、もっと、もっと私を犯してくださぁぁいぃ!!」
今のリムには、自らの全てをルドーラに捧げることが当然のことと考えている。心の奥の錠前を自ら外し、その身に内包されている全てをルドーラのなすがままに任せ
吸い出されることが至上の悦びに感じられてきている。
それに伴ってルドーラの魂にリムの魂が汚染され、徐々にリムは人間から離れた生物にされつつあった。
「そう、それでいいのよ…」
ルドーラに抱かれているリムの顔が見る見る喜色に染まっていくのをラトは満足そうに眺めていた。
どんなに拒んでも、ルドーラ様から与えられる快楽に逆らえるわけがない。それは自分が一番よく知っている。
あの強制進化がもたらす頭の中が吹き飛んでしまいそうな快感は、一旦味わったら決して忘れられるものではない。
そして、心にも体にも快楽と共にルドーラ様の標が隅々まで刻み込まれ、自分がルドーラ様の物であるという事が認識されていくのだ。
すでに今のリムの頭の中はルドーラ様のことで占められているはず。
さっきまであれほど脅えていたのに、今はうっとりと目を潤ませてルドーラ様に抱きつき、足までルドーラ様の体に回してガクガクと腰を揺すっている。
また、ルドーラ様もリムの体に満足しているようで、目をギラギラと輝かせながらリムの力をその身に吸収していっている。
わざわざリムをメイマイから連れて来たかいがあったというものだ。
「どう?リム。ここに来てよかったでしょ?こんな気持ちいい思いをすることが出来て嬉しいでしょ?」
「うん、うん!!お姉ちゃんありがと!
私、こんな気分はじめて!気持ちよくて気持ちよくて、なにもかもどうなってもいい感じ!!こんなの、メイマイにいたときは考えもしなかった!!
あはぁぁっ!ルドーラ様のが私の中でどんどん大きくなってるぅ!子宮の奥がゴリゴリって抉られてるよぉ!」
自分を騙し、生贄にされるためにここまで連れてこられたことを知って酷いショックを受けていたことなどとうの昔に忘れ去り
訥々と嬉し涙を流しながら姉に感謝の言葉を述べているリムの外見にもとうとう変化が訪れつつあった。
耳がみちみちと肉が爆ぜる音と共に長く伸び、全身の所々に赤黒い紋様が浮かんできている。
それはリムやメディーナにも見られる、ルドーラのしもべとしての証であった。
「うふふ…。これでリムももうすぐ完全なしもべになるわ。これからは一緒に、ルドーラ様に仕えていきましょうね……」
ラトが嬉々として見守る中、リムの体が一際大きくはね嬌声を上げたかと思うと、リムとルドーラの接合部から大量の白濁液がどぼどぼと噴出し
あまりの強烈な快楽に一瞬白目をむいたリムはそのままガクンと気を失ってしまった。
「あ…あひぃぃ……」
まるで天にも昇る心地で気絶したリムの額に、最後の仕上げとばかりにしもべの紋章がスゥッと浮かび上がり
その形が鮮明になっていくに伴って虚ろに開いたリムの瞳の色が薄藤色から暗い紅色へと変わっていった。
「さて、と、ラト」
リムの体がどんどんしもべのものへと変わっていく中、ルドーラはそれを見届けることなくリムの中から逸物を抜き出し
ラトへと近づくと精液と愛液に塗れたペニスを突き出した。
それだけでラトにはルドーラが自分に何を求めているのかを理解することが出来た。
「はい…。んむっ」
ラトはルドーラのペニスを優しく包むように咥え込むと、周りについた液体を丁寧に舐め取り始めた。
ルドーラの味とリムの味が口一杯に広がって来るが、構わずにラトはぴちゃぴちゃとルドーラのものを清め続けた。
「メディーナ、リムを連れて行って体を洗い、しもべに相応しい服装に着替えさせてきなさい。
せっかく新しく誕生したしもべです。この場で盛大に歓迎してあげようではありませんか」
「はい、ルドーラ様」
メディーナがリムを抱え上げて部屋を出て行くと、それを待っていたかのようにラトがペニスから口を離してルドーラの足にもたれかかってきた。
「あはぁぁ……。ルドーラさまぁ……私、わたしにもお情けをくださいませ……
メイマイにいる間も、ずっとルドーラ様のことを思って夜な夜な手淫に耽っていたんです……
それで今のような光景を目の前で見せられ、もう辛抱たまらないんです……」
ルドーラの脛にぐりぐりと擦りつけているラトの股間は、失禁でもしたかのようにはしたなく濡れそぼっている。
いや、もしかしたら本当に多少は漏らしてしまったのかもしれない。
「お願いです、お願いです……。またあの時のように、ズボズボって犯してください……お願いします……」
「やれやれ……。主人におねだりをするとはどうしようもない我侭なしもべですねぇ……」
そう言いつつもルドーラの股間はさっきとかわらずに雄々しくそそり立ち、ひくん、ひくんとしゃっくりを繰り返している。
「…いいでしょう。リムが戻ってくるまでの時間つぶしにもなりますし。
その体、またじっくりと味あわせてもらいますよ…」
ルドーラはラトを床に押し倒すと、体重をかけて覆い被さってくる。
そのままラトの熟れきった股間にペニスを当て、子宮口まで貫くかの勢いで突き挿してきた。
「うはぁ――――っ!」
本当に久しぶりの肉が埋まる感触に、ラトは顔面一杯に満足そうな笑みを浮かべ、部屋中に響くぐらいの大声で吼えた。
☆
「失礼します…」
それからかれこれ一刻ほど経ち、部屋中で行われていた魔宴もお開きとなって参加者も全て引き払い、意外なほど静かになった広間に
メディーナに付き添われて戻ってきたリムは、そのイメージを一変させていた。
メイド服を模したレザーアーマーを着込んでいた時はその外見上から控えめで大人しげな印象を与えていたのだが、多くのしもべと同じシースルーを多く取り入れた
ハーレム着を身につけたリムは、以前により増して体のラインが強調され、まだ幼い体つきの中に非常に淫靡な雰囲気をかもし出している。
ただ、以前のメイド服を廃した中で、唯一頭部のカチューシャ状のヘッドギアだけは変わらずに装着したままになっている。
ミスマッチといえばミスマッチなのだが、これはこれでリムのイメージには合っている。
実際ルドーラもそれほど悪くは思っていないようだ。
「ほら。ご主人様にご挨拶しなさい」
「あ……はい」
しもべの先輩であるメディーナに優しい声で諭され、リムは発情で顔を赤らめながらルドーラの前に進み出て、恭しく頭を下げた。
「ルドーラ様……
此度は私めをルドーラ様のしもべに加えさせていただき、誠に光栄の極みです…
この身にかえて、永遠の忠誠を誓いさせていただきます……」
ルドーラに対する隷属の誓いを立てている間も、リムの瞳は歓喜に潤み興奮から吐く息は荒くハァハァと音を立てている。
ついさっきまで全く男を知らなかった体は僅かな時間で男を蕩かす媚体に変貌を遂げ、かつその全てをルドーラ1個人に捧げることに悦びを見出すようになっていた。
今のリムならルドーラが死ねと言えば躊躇いなくその命を絶つであろう。
もっともそれは、ルドーラのしもべになったもの全員に言えることである。
ルドーラのしもべは勿論人間ではないが、さりとて魔族といえる存在でもない。
その全員がルドーラの魂の一部を分け与えられたルドーラの分身のようなもので、ルドーラの言うことだけに従いルドーラのためだけに生きる全く新しい生命体といっていい。
だから今のリムにはもはやメイマイとかティナとかは瑣末なものですらなく、道端の石ころ以下の存在と化している。
「リム、お前にはこれからラトと共にメイマイをわが駒とするための尖兵になって貰います。
メイマイの人間をうまくけしかけて大陸に侵攻させ、プリエスタを陥落させるよう仕向けるのです」
「はい…かしこまりました!」
故に、ルドーラのメイマイを手駒にして裏から操る策にもなんの疑問も挟むことなく、むしろルドーラから直々に命令を下されたことにこの上ない悦びを感じ嬉々として承知した。
「私、頑張ります…!必ずやメイマイをルドーラ様の意に添うように操ってみせます。
そして、ルドーラ様のお目に適うような供物を御前にお連れ致します……!」
リムが自ら言った『供物』という言葉に真っ先に思い浮かんだのは、奇しくもラトと同じくティナの姿だった。
かつてティナ付きのメイドだっただけに、ティナとのかかわりの濃さはラトと比しても決して遜色はない。
メイド、または武将としてティナに仕えていた時、リムにとってティナは殆ど歳が変わらないにもかかわらず女王としての貫禄と風格を持ち
かつ同性のリムが見ても惚れ惚れする整った容姿に多大な憧れと多少の嫉妬を感じる存在だった。
だが、ルドーラのしもべとして転生した今のリムにはティナに対する憧れは存在しない。
しもべになったリムにある女性への規準は、ルドーラの強制進化に足る存在であるか否か、それだけであり、それに関してティナは申し分ない女性だった。
あの貞淑なティナが自分と同じくルドーラ様によって乱れ狂わされて性の虜になり、自分から望んで強制進化を受け入れ
脳が弾けるほどの快楽と共に新たなしもべと変わっていく。
「あはぁぁ……、なんて、面白そう……」
そんなティナを想像しただけでリムの体の奥が燃え上がり、どうしようもなく体が発情していってしまう。
目の前にルドーラがいるということもリムの淫心をちくちくと刺激し、足腰に力が入らなくなっていってしまう。
「あ……!ふぁぁっ!!が、我慢できません……!」
たまらずリムはその場に崩れ落ち、両手をすでに潤みきっている股間に突っ込みぐちゃぐちゃと音を立ててかき回し始めた。
「い…いぃ……気持ちいいぃ……」
リムの手が中をひと掻きするたびに、淫欲に爛れた体にビリビリと痺れるような快感が通り過ぎていく。
だが、快楽に目覚め快楽に染められきった体は今まででは考えられないほど貪欲に快楽を求めて止まず、手淫ごときで得られる快感ではとでもではないが物足りない。
リムがいくらかき回しても燃え上がった炎は静まりはせず、かと言って大きく燃え広がったりもせず体の奥でぶすぶすと燻り続けたまま、リムの体内を焦げ付かせていった。
これははっきり言って拷問だ。決して終わりに付くことは出来ず、欲望の炎だけがいつまでももどかしく燃え続ける。
人目も弁えずに自慰に没頭するリムの顔は終わらない快楽に呆けたようになり、切ない呻き声と涎を口から際限なく零しながらルドーラに熱っぽい眼を向けてきた。
「あ、あうぅ……、ルドーラさまぁ……。体が、体が疼いてどうしようもないんです……。いくら弄っても収まらないんです……
お、お願いします。ルドーラ様、ルドーラ様のお情けをください……
このままでは、頭がおかしくなってしまいます……」
指を忙しなく動かしながら懇願してくるリムに先ほどのラトを思い出し、危うくルドーラは噴出しそうになってしまった。
「おやおや……、ラトとは血が繋がっていないと聞きましたが、しもべの立場を弁えずに主人におねだりをしてくる様はまったく同じですね。
なんだかんだ言っても、仲のいい姉妹ではないですか。聞いていますか?ラト」
ルドーラは皮肉たっぷりに笑いながら、自分の腰下で喘いでいるラトに眼をやった。
そう、ラトはリムが連れてこられる間、そして連れてこられても変わらずにルドーラのペニスをくわえ込んだまま自分で腰を動かし、その熱く太い肉棒を味わい続けていたのだ。
だが、当のラトはルドーラの言うことなど耳にも入らないと言った感じで忙しそうに腰を振り続けていた。
四つん這いのワンワンスタイルで時に前後に、時に円を書くように揺すって自分の肉壷の隅々までルドーラを感じようとしているラトの顔は
リムとは正反対にうっとりとした至福の笑みに包まれていた。
「あぁん…、ルドーラさまぁ。もっと、もっとぉ……」
先ほどからずっと交わり続けているにもかかわらず、一向に収まる気配を見せない性欲に忠実に従いなおも求め続けてくるラトに
ルドーラは苦笑しつつ、ラトを抱え上げてリムの元へと近づき床に転がっているリムの上にラトの体をとすりと下ろした。
「ふぇ……お、おねえちゃ……?」
突然自分に圧し掛かってきたラトに一瞬リムの瞳が光を取り戻すが、目の前の姉がルドーラに突かれて快楽に蕩けきっているのを見て、不満げに眉を歪めた。
「おねえちゃん……ずるぅい!お姉ちゃんばっかりルドーラ様に抱かれているなんてずるいよぉ!!
私だってルドーラ様のおちんぽ欲しいのにぃ!私にも頂戴よぉお姉ちゃん!!お姉ちゃんったらぁ!!」
少ない隙間でリムはラトの肩をぽかぽかと叩いて抗議の意思を示したが、ラトはそんなリムに構いもせずにルドーラの肉棒の味に酔い続けていた。
「んふっ、ふぅぅ!気持ちいい、気持ちいい!!ルドーラ様の逞しいのが、ガンガンって突いてきて……最高ぉぉ!!」
ラトはまるでリムに見せ付けるかのように激しく体を揺すって全身でルドーラを受け入れている気持ちよさを表現していた。
それがまた、リムには酷く悔しい。
「やだやだぁぁ!お姉ちゃんのドケチぃ!ルドーラ様を独り占めするなんて酷いよぉ!
ル、ルドーラ様ぁ、お姉ちゃんだけじゃなくて私にもください!!その太いおちんぽで、私の体の奥の奥まで深く貫いてくださぁい!!」
焦らされきった神経は焼ききれそうなまでにズキズキと疼き、耳に聞こえそうなほどに高鳴っている鼓動は今にも胸を突き破ってきそうだ。
これ以上待たされたら確実に狂ってしまう。リムは本気でそう感じ、切羽詰った声でルドーラに懇願してきた。
だがラトはそんなリムの悲痛な声を打ち消すかのように大声で叫び上げた。
「だめぇぇ!ルドーラ様は今は私を愉しまれているのよぉ!!私の体を味わい、堪能なさっておられるのよ!
貴方はもう少しそこで見ていなさい!ルドーラ様が私の体に満足なさったら、あなたに挿れて貰うよう頼んであげるから!!」
ラトはあくまでもルドーラのほうに決定権があるように語っているが、要するに自分が満足するまではルドーラの肉棒は渡さないと言っているのだ。
そして、恐らくラトが気絶するまでラトが満足することはないだろう。
それがどれだけの長さになるかはわからないが、一つ確実に分かっているのはその時にはリムは精神を壊してしまっているということだ。
もちろんそのことはラトも承知しているだろう。それでいて、なおラトはルドーラのモノをリムに渡す気はなく一人で味わい尽くそうとしていた。
ルドーラのしもべであるラトにとって、ルドーラと繋がっているということはそれほど得難い快楽であり、決して手放したくないものであった。
もっとも、それはリムも同様で目の前にルドーラがいるのに何もされないということは死に勝る苦痛であった。
だからこそリムは半狂乱になってルドーラを求めているのだ。
「あははっ!もう少し、もう少し辛抱しなさい!!ずっともう少し待って………ぇ?」
自分の真下で暴れ狂うリムをラトは優越感に満ちた目で眺めていたが、その目が不意に大きく見開かれた。
「あっ!!あははぁあっ!!は、入ってくるぅ!ずぶずぶって入ってくるぅぅ!!」
突然リムが顔を喜色に輝かせ、歓喜の悲鳴を上げ始めたのだ。その顔は明らかに、今までお預けを喰らっていたものの禁が解かれた悦びの笑みだった。
だが、解せない。
今でも自分はルドーラ様のペニスを受け入れている感触がある。この太くて熱い肉棒の味は紛れもなくルドーラ様のものだし、途中で引き抜かれた覚えもない。
でも、リムのリアクションはどう見ても刺し貫かれて悦んでいるものだ。これは一体……
快楽の中、湧き上がった疑問に顔を歪めるラトに、ルドーラが腰を振りながら囁いてきた。
「ふふふ、ラト。納得できないみたいですね。
自分が抱かれているのに妹も抱かれているのは何故なのか、と。
まあ、私としては片方のしもべだけ悦ばせるのはかわいそうだと思いましてね……」
見ると、ルドーラの腰からは今までラトを貫いていたペニスの下からもう一本全く同じペニスが生え、リムの秘壷を貫いているではないか。
「私は実は二本持っていましてね、こうしてしもべを二人いっぺんに可愛がることも出来るのですよ…」
「えぇっ?!じゃあそれを……」
どうして前と後ろに挿れてくれなかったのかとラトは不満を漏らしそうになったが、それより前にリムの嬌声が耳に響いてきた。
「あぁん!ルドーラ様ぁぁ!気持ちいい、気持ちいいですぅ!!もっと、もっと奥までズンズン突いてくださぁい!!」
ぱつん、ぱつん、と腰がぶつかる音がするたびに感じる痺れるような心地よさ。
ラトが感じるそれを、リムも同時に感じている。リムと全く同じ感覚を自分も一緒に共有している。
今、ルドーラ様の寵愛を授かっているのは、自分とリムの二人だけ。
最初はリムのことをルドーラ様の歓心を奪う疎ましい存在と感じていたが、こうして一緒に貫かれていると同じしもべという立場を共有する仲間として愛おしささえ感じられてくる。
「んぁぁ…リム、リムぅぅ……」
「ふあぁ!おねえひゃあん!!」
リムが親を亡くし、ラトの家に引き取られてきた頃のような、まるで自分に本当の妹が出来たような気分になった幼い頃のことを思い出す。
ルドーラの手で同じしもべにされたことで、もしかしたらようやっと本当の姉妹になれたのかもしれない。
「「ん―――っ!!んんぅ――――っ!!」」
ラトとリムは、どちらかということもなく腕を絡めて顔を寄せ合い、唇を重ねて思い切り吸い合った。互いの唾液が混ざり合い、一つとなって流れ落ちていく。
「んあぁっ!気持ちいいよおねえちゃぁん!!ずぽずぽがいいの!凄いのよぉ!!」
「私も、私もよリム!ルドーラ様のおちんぽが、おちんぽが気持ちいい!!気持ちよすぎて壊れちゃうぅ!」
ルドーラが一突きするたびにラトとリムが同時に喘ぎ、体が跳ね、蜜が飛び散る。
まるで同一個体のようにまったく同じ動きをするラトとリムを見て、後ろから貫いているルドーラに耳元まで釣りあがった笑みが浮かんだ。
「ふはは!仲睦まじくて結構ですね!!では、姉妹仲良く果てさせて差し上げましょう!
存分に受け取りなさい!!」
ルドーラは止めの一突きとばかりに、今までよりさらに強く、深く腰を突きいれ、それと同時に二人に穿っているペニスの先端がブクッと膨らんだかと思うと、灼熱の粘液が二人の子宮一杯にドドドッと注ぎ込まれてきた。
「あ、あつぅぅぅい!!」
「きぁあああぁぁ〜〜〜っ!!」
しもべになって初めて注ぎ込まれたリムも
しもべの体で散々受け止めてきたラトも
ルドーラの迸りを漸くその身に受けた悦びで一気に昇りつめ、頤(おとがい)を仰け反らせながら声を振り絞りあっという間に気を失ってしまった。
「あ、あひぃ……もっと、もっろぉぉ…」
「はっ、はっ、あははぁぁ……」
折り重なるようにして床に伏し、陶酔感に満ち満ちた笑みを浮かべながら消えそうな声でうわ言を呟く二人を、ルドーラは意外なほど醒めた瞳で眺めていた。
「主人をほっぽらかして勝手に気絶するなんて、本当に我侭なしもべですねぇ……
まぁ、これからたくさん仕事をして貰いますから多めに見てあげましょう。ふふふ……ふははは……」
ルドーラの低い笑い声が、がらんとした広間の中に不気味に、意外なほど大きく鳴り響いていた。
魔宴も終わり、自室に戻ったルドーラの前にメディーナが立っている。
その小脇には色々なことがびっしりと書かれた羊皮紙が何枚か抱えられており、1枚1枚抜いてはルドーラへと報告していた。
「それで、メイマイの人間たちはあの後魔法生物製造プラントの方へと回し、魔生物の核を移植させました。これで設定したキーワードを聞かせるだけで即座に魔法生物へと成長します。
あと、エルティナが例の連中をけしかけることに成功したそうです。魔法生物三個部隊を分け与えましたので間もなく行動に移るかと」
「結構です。彼らは混沌を望んでいるようでしたからね。トライアイランドでの私たちの動きのいい煙幕となるでしょう。
それで、ゲラからはあの後連絡はありましたか?」
「それが……」
メディーナは一瞬言葉を詰らせたが、ルドーラが続けるように促したので仕方なく続けた。
ちなみにゲラとはスパイとしてアゼレアがいるトライアイランドに潜入させていたルドーラ直属の魔族のことだ。
一時は巧みな話術でアゼレア=ウッドエルフを疎ましく思っているダークエルフのプロミネントに接触していたが
ウッドエルフとダークエルフの和解に伴い居場所を失い、逃げるように出奔している。
そして、両エルフが和解したとの連絡をした後ゲラからは連絡がぷっつりと途絶えていた。
「ゲラ様からいまだになにも……。こちらに戻る気配もなく、完全に音信不通です……」
それはある程度予想された答えなのだが、ルドーラは不快感を隠そうともしないで眦をきゅっと細めた。
「……逃げましたかね、まったく使えない奴ですね。言われた事も碌にこなせないとは……
まあいいでしょう。向こうには一応保険もかけてありますし……、それよりもメイマイのほうを動かす手筈を整えませんとね。
聞いていますか?ラト、リム」
「ふぁい……」
「んはぁい………」
ルドーラに呼びつけられたラトとリムの声がルドーラの股下から聴こえて来た。が、その声は妙にくぐもっている。
「んっ……んぐっ……」
「あむっ…ちゅぅっ……」
見ると、ラトとリムは丸出しになったルドーラの下半身から伸びている二本のペニスにむしゃぶりつき、嬉々とした顔で奉仕をしている真っ最中だった。
先ほど広間で散々に二人を抱いたにもかかわらずその肉棒はいまだに硬さを失わずに太くそそり立っており、ラトもリムも自分たちを天国に導くそれを丹念に舐め清めていた。
「はあぁ……、ルドーラ様のおちんぽ、熱くて硬くてぇ……。いつまでもしゃぶっていたい……」
「ん?お姉ちゃん舐めているだけでいいのぉ…?私は、やっぱり挿れてもらいたいけどなぁ……。あむぅ……」
「んふっ、それとこれとは、話が別………ちゅっ、ちゅぅぅ……」
「ふふっ、可愛いしもべたちです。そのままでいいですから聞きなさい。
これからお前達にはメイマイに戻り、あの国の軍隊をトライアイランドに侵攻させるように仕向けさせるのです。
そのための手筈は整えつつありますので、後はお前達の働き次第と言うことです。
私のしもべとしての働きに、期待していますよ……」
「「っ!!」」
ルドーラに期待していると言われ、ラトもリムも奉仕を続けながら喜びで目をうっとりを潤ませた。
「お任せください。必ずや、ルドーラ様のお望みどおりに進めてみせます……」
「私をしもべに加えてくださったルドーラ様への忠誠、此度の働きできっちりと示してみせます……」
「…可愛いことを言ってくれますね。それでこそ私のしもべです。
ではメイマイへ行く前に、今一度お前達の体を味合わせていただきましょう。
向こうを向いて四つん這いになりなさい。二人まとめて貫いてさしあげます」
「「は、はい!!」」
またルドーラ様が犯してくださる!
そう考えただけでどうしようもなく胸が熱くなった二人はくるりと踵を返し、すでにぐっしょりと濡れている臀部をルドーラの元へと曝け出していた。
「あぁ〜〜〜ん!ルドーラさまぁ!もっと、もっと奥まで抉ってぇ!!」
「ください!ください!!ルドーラ様の熱い精液、もっとリムの子宮にかけてください!!」
その夜いっぱい、エレジタットの魔城の一室から二体のしもべの嬌声が響き続けていた。
☆
調印式を終え、無事に帰ってきた使節団一行を出迎えたティナだったが、その後ラトとリムがもたらした一報に色を失った。
「なんですって……、トラテペスが?!」
トラテペスはトライアイランドの東端に位置しメイマイとは海を挟んで隣同士の、かなり古い歴史を誇る国だ。
トラテペスの君主カモロテスはネバーランドでも屈指の賢者であり、隣国であるメイマイとも親交は深かった。勿論ティナも直接会ったことがある。
そのトラペテスが全く突然謎の集団に侵攻を受けてあっさりと全土を支配され、カモロテス以下国の主要人物は全員処刑されたらしい。
「トラテペスを占領した連中はノーリュ独立部隊と自分たちを名乗って、さらに版図を広げる気配を見せているわ」
このラトの報告が真実だとすると、トラペテスと隣国のメイマイも危ない。
いくら海が間にあるとはいえ、1国をあっという間に占拠できる集団が一気に襲ってきたら防ぎきれるかどうかは定かではない。
じゃあそんな時のためのエレジタットとの同盟……と思いきや、エレジタットはあくまでも『プリエスタ』が侵攻してきた時の同盟なので
ノーリュ独立部隊が攻めて来た時はその条項に当てはまらない。
これは、調印してきた時のほかの人員に聞いて確かめたから間違いない。
「なんてことなの……」
ティナは目の前に迫った危機に目の前が暗くなった。
それにしても、最近ネバーランドの各地で急速に戦乱の火が上がりつつある。
大魔王ジャネスが死んだことで力のバランスが崩れたのか、まるで群雄割拠のような状態になりつつある。
なかでもトライアイランドの様は著しい。つい先だってハイラングールがプリエスタの手で滅ぼされたと思ったら、こんどはトラテペスが得体の知れない連中に乗っ取られた。
まるでトライアイランドに強烈な悪意でも集まっているかのように見える。
「悪意……?!まさか……」
その時ティナはある推測が頭に浮かんだ。人間を凶暴に駆り立てるほどの悪意、それはまさか……
「ええ……ティナが察したとおり、これは暗黒竜アビスフィアーが復活したんだと思う……」
ラトのいうことに、ティナもやはりと言った感じで小さく頷いた。
暗黒竜は過去にティナたちの手で封印したはずなのだが、所詮相手は人間とは桁外れの力を持つ存在。
人間の悪意を糧として生きる暗黒竜は、例え封印されていたとしても悪意が濃くなればなるほど力を増していく。
まして、今はネバーランド全体が戦争になりそうな気配を見せているのだ。
悪意もかつてない以上に高まっており、それに反応した暗黒竜が封印を解いたとしてもちっとも不思議ではない。
「私たちの船がトライアイランドの近くを通った時、島全体から物凄い邪悪な気配を感じたわ。
間違いなくアビスフィアーは、トライアイランドに現れているわ……」
「私も見ました。トライアイランドの空覆う真っ黒な雲を。
もう二度と、見たくなかったのに……」
ラトもリムも、沈痛な面差しでそのときのことを回想しており、リムに至っては目に涙まで浮かべている。
無理もないだろう。リムは暗黒竜によって両親を失っているのだ。『その時』のことを思い出してやるせない気持ちになっているのだろう。
「ティナ、一刻も早く暗黒竜を封印しないと大変なことになってしまう!」
「ええ…、分かっているわラト。でも……」
そうなのだ。暗黒竜を封印しないとネバーランドに混乱が起こるのは間違いない。それを事前に防がなければならないのは分かっている。
ただ、場所が問題なのだ。
以前暗黒竜が出た時はメイマイの領土内だったから事前にいくらでも兵士を動かせた。
暗黒竜の周りにはその邪気に惹かれて数多くの悪魔も現れるので兵の展開が不可欠なのだ。
だが今回暗黒竜がいるのはメイマイ領外のトライアイランドだ。自国以外の領土にメイマイの兵士を行かせるとなると容易なことではない。
トラテペスがあったならば話もつけやすかったのだが、今そこには好戦的なノーリュ独立部隊が居座っておりとても話し合いに応じるとは思えない。
となると、無理矢理にでも軍を上陸させるしかないが、それではノーリュ独立部隊との衝突は必至になってしまう。
暗黒竜を倒すためのメイマイの兵士がそれ以外のものと交戦するということは、ティナとしてはなんとしてでも避けたかった。
それはティナが危惧していた、メイマイが戦火に晒されることに自ら陥ってしまうことだからだ。
確かに暗黒竜をほうってはおけない。しかし、メイマイを戦火に晒すことはしてはならない。
理想と現実に苛まれて押し黙るティナに、痺れを切らしたかのようにラトが叫んだ。
「ティナ!あなたの言いたいことは分かる!でも、このまま暗黒竜を放っておいたらメイマイは日をおかずに戦争に巻き込まれる!
ここはあえて、トライアイランドに上陸するべきだと思う!そしてすぐさま暗黒竜を封印するのよ!」
「私も、姉さんと同じ考えです。
きっとプリエスタのエルフもトラテペスを襲った人たちも暗黒竜の邪悪な気に当てられているのだと思います。
このままですと、トライアイランドからネバーランド全土に暗黒竜の影響が広がっていきます。
そうなったら、もう私たちの手には負えなくなります…」
ラトもリムも、ティナに決断を促している。二人の言い分は少々強引ではあるものの理には叶っていた。
だがティナにはその一言が言い出せなかった。今までメイマイは一度も外征をしたことがない。兵士はあくまでも自衛のためであり他国を攻めるための兵ではないのだ。
歴代の王、勿論ティナの父もそのことを固く戒めており、ティナも散々父から言い聞かされてきていた。
それを、自分の手で禁を破っていいものなのか。ティナはそれが恐ろしくてならなかった。
「私は……、私は………」
「ティナ!暗黒竜を放ってはおけないのはわかるでしょ?!ねえ!!」
いつまでも煮え切らないティナに、ラトが怒ったような形相でがぶり寄ってきた。リムもラトほどではないが吐息が感じるくらいまでには近づいてきている。
「トライアイランドを攻めるのよ、ティナ!私たちは暗黒竜を封印しなければならない!」
「そうですティナ様!私の手でトライアイランドを落とし、暗黒竜を倒すのです!!」
「ラト……?リム………?!」
異様なほどにティナに決断を促してくる二人に、ティナは底知れない違和感を感じていた。
しかも、二人の言葉のニュアンスはさきほどと微妙に異なっているように感じる。
まるで、暗黒竜を倒すのが目的ではなくトライアイランドに攻め込むことが目的のように聞こえてきている。
「ちょ……ふたり、とも……?!」
二人の真意を正そうとティナが二人へと目を向けたとき、ティナの目が驚きで見開かれた。
ラトとリム、二人の瞳が赤く不気味に輝きティナのことをじっと見つめていた。
その赤い光は時折瞬き、時には光度を増し、あるいは減じ、ティナの網膜をじりじりと焼いてきている。
底知れぬ恐怖を感じたティナは視線を逸らそうとしたが、時既に遅く二人の赤い瞳から目を離すことは全く出来なくなっていた。
「あ………ぅ………」
ちかちか光る瞳を見ているうち、最初に感じた恐怖心もまるで波が引くかのように収まっていく。
というか、何かを考える、感じるということ自体が億劫になり、自分がなにをしているのかということすらわからなくなってきている。
そうしているうちに次第にティナの瞳から光が失せ、一緒に表情までもが失せていった。
「いいことティナ……、メイマイ騎士団を再結成してトライアイランドに侵攻するのよ。
邪魔する人間は皆殺しにして暗黒竜を見つけ出し封印するの。それが私たちに課せられた使命なんだから……」
(メイマイ騎士団を再結成して、トライアイランドに……トライアイランドに侵攻する………)
ラトの声がまるで絶対の命令のようにティナの耳に響いてくる。ティナは無意識の内にラトの言葉を反芻し、心の奥に刻み込んでいった。
「…メイマイ騎士団の手でトライアイランドに攻め込んで、私たちの手で暗黒竜を封印する………」
「そうですティナ様。そうしなければなりません。人間もエルフも、私たちの邪魔になるものは全て殺して暗黒竜を封印するんです」
「そうねリム。私たちは暗黒竜を封印しなければならない。例えどんな犠牲を払おうとも」
まったく表情のないままティナはこくりと頷いた。その瞳には僅かではあるが赤い光が宿っており、ティナの意思を束縛しているように見える。
「ラト、リム。
私たちは立たねばなりません。この手で再び、そして二度と復活しないよう暗黒竜アビスフィアーを封印するのです。
そのために私はあえて禁を破り、メイマイ騎士団を国の外へと出します!」
「わかった、ティナ。私はティナの決断したことに従うよ。それが例え、どんなに苦しいことであっても」
「私もです。大して力になれないかもしれませんが、ティナ様の願いをかなえるために力いっぱい頑張ります!」
メイマイの兵を外に出すというのがどういうことか、ラトもリムもそれを重々承知しているのにそれでいて自分についてくると言ってきている。
そのことにティナは胸が詰る思いをしていた。
『自分が決めた苦しい決断』にラトもリムも完全に付いてくると言ってくれている。これほど嬉しいことはない。
「ラト、リム。今晩メイマイ騎士団の再結成を決定しようと思います。各騎士隊長を招集しますのであなたたちも忘れずに参加してくださいね」
「分かっているわ、ティナ」
「これから大変ですけど頑張りましょう!」
二人の言葉に凛と微笑んだティナは、そのまま部屋を後にした。きっと大臣達とこれからの進路を協議しに行くのだろう。
そして残った二人は、ティナを見送った後ククッと低く笑った。
「巧くいったね、お姉ちゃん」
「ええ。これでメイマイは全力をあげてトライアイランドに侵攻するわ。
ティナの意識には立ちはだかる人間を皆殺しにするよう刷り込んである。ノーリュ独立部隊には悪いけど私たちの捨て駒になってもらうわ」
そして、その先にはプリエスタがある。全てはメイマイをプリエスタに侵攻させるための策略だったのだ。
もちろんティナに言った暗黒竜が復活した形跡などあるはずがない。トラテペスに暗黒竜がいなければ、ティナはメイマイ騎士団の全力を挙げてプリエスタに攻め込むだろう。勿論邪魔者を皆殺しにしながら。
そして自分たちはルドーラ様の目的であるアゼレアを見つけ出し捕獲するのだ。その後はプリエスタもメイマイもどうなろうが知ったことではない。
「その前にティナも、ルドーラ様に捧げておかないといけないね」
「メイマイ騎士団が上陸したら連絡を入れておきましょう。トラペテスを征服したときにルドーラ様を招き入れて、ティナをしもべに加えてもらうのよ」
「楽しみだね、お姉ちゃん」
「ええ、とっても」
ルドーラの命令どおりメイマイを戦火に引きずり出すことに成功した二人は、赤い瞳を輝かせながらいつまでもクスクスと笑い続けていた。
続く
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